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「恐怖小説キリカ」を読み終える。SNS時代にふさわしいホラー小説

 

恐怖小説 キリカ

恐怖小説 キリカ

 

 

 恐怖小説キリカを読み終える。

 「ぼぎわんが来る」で角川ホラー大賞を受賞した澤村伊智氏の3作目。いやー、発売を見落としてました。

 そして明日には新作が出ると・・・・・・。時間が足りない!

 

ししりばの家 (角川書店単行本)

ししりばの家 (角川書店単行本)

 

 

 澤村伊智氏の小説は2作目の「ずうのめ人形」から読み始めて、一気にファンになりました。デビュー作の「ぼぎわんが来る」はいつか読もうとは思いながらもまだ読めていません・・・・・・

 以下、感想です。

 「恐怖小説」とわざわざ書くからには、「最後にどんでん返しがあって『感動小説』になるのでは! 」などとあまのじゃくな心持ちで読み始めましたが、結果、きちんと恐怖小説でした。

 帯に「澤村伊智がミザリーに挑戦~」という煽り文句があるのですが、やはりというかミスリードを誘う文句です。「ほらね!」と読者が得意顔を浮かべるところまで編集部の計算だろうと思い、得意顔から渋い顔になります。そのまま「ミザリー」のような展開であれば、何の意外性もないですしね。でも、こういう仕込みは楽しい。ホラー小説ならではの楽しみというか、一般文芸でこういう仕込みやると怒る人いるだろうし。恐がりなのでホラー小説を好んで読む習慣はないのですが、こういうのは楽しいので今後はもっとを手に取ってみようと思います。

 本作は澤村伊智、本人を主人公のモデルにした、フェイクドキュメンタリー風小説となっており、途中、過去の作品のネタバレがバンバン書かれてあります。特に「ぼぎわんが来る」に関しては、この小説の出だしが作中の佐村伊智氏が「ぼぎわんが来る」のホラー大賞受賞を知らせる場面から始まるので、ほとんど作品の核となる部分が解説されています。

 今の気持ちは、うわー、ちゃんと読んでおけばよかったなという気持ちが半分と、この解説を頼りに「ぼぎわんが来る」を読んでみるか、という気持ちが半分です。まだ「恐怖小説・キリカ」を読んでいない人は過去作である「ぼぎわんが来る」「ずうのめ人形」を先に読んだほうがより楽しめるとは思います。

 「ぼぎわんが来る」に関しては核心を知ってしまいましたが、有川浩氏が「澤村伊智の小説はホラー小説である前に極上のエンタメ小説である」と評している通り、文章が達者なので、ネタがわかっていても十分楽しめるでしょう。

 「恐怖小説・キリカ」の話に戻りますが、本作はフェイクドキュメンタリー風小説(フェイク)という2段階のメタ視線で書かれており、さらに3部構成で非常に凝った小説になっています。しかし、最後に全体を構成する要素がかっちり嵌まって「気持ちいい!」となるような快感はあまりないです・・・。ちょっと凝り過ぎてるというか、仕掛けは複雑だけれどもうまく機能していない印象を受けます。

 ただ読後、SNSなどで作品に関してちょっとでもマイナスな発言することをためらったなら、その時点で澤村先生の勝ちです。私も無意識に言葉を柔らかくしているような気がします。というより、この小説を読んだ大体の人がそうなるんじゃないでしょうか。澤村先生、大勝利ですわ!

 「ホラー小説なんて作り話で、一番怖いのは人間だ」と多くの大人は思っているいるでしょう。私も実際そう思います。ただ「一番怖いのは人間」という割には、無警戒に深夜コンビニへ出かけたり、SNSで人の悪口を書いたり、自宅付近の写真をアップロードしたり無防備な人がいっぱいいる。暗闇に紛れて後ろから鈍器で殴られるかも知れないし、アップロードした写真から自宅が特定されるかもしれない――

 社会生活は周りに対してのある程度の信頼から成り立っていますから、常日頃、「周りは全員敵だ!」と考えていては生活が成り立たなくなります。また、一昔前まではネット社会と現実社会は完全な別物でしたが、今はある程度、現実とネットが地続きになっています。今後はますますそういった傾向が進んでいくでしょう。

 一見普通の人がネット世界ではものすごい影響力を持っていたりするかも知れない。人とコミュニケーションをとる時に、その人自身のことだけではなく、その人とつきあいのある人間等、バックボーンを常に意識して発言、行動しなければならない時代が訪れつつあります。そういったSNS時代のホラー小説として非常に楽しめる作品です。

 澤村伊知作品が初めての人には少し読みづらいかも知れませんが、ちょっと薄気味悪い思いをしたい、という奇特な人は是非読んでみて欲しいですね。